思考と感情のループ

生き方

本記事では、いかに思考と感情がループ状に関わり合っているのか説明する。拙稿「なぜあなたは変われないのか」と関わりの強い内容となっている。ぜひそちらも参考にされたい。

思考が脳の言語であるように、感情は身体の言語である。そして、何をどのように考えるか、感じるかが、心の状態を作る。心の状態とは、意識と身体が連動している状態を指す。したがって、現在の心の状態とは、純粋に意識と身体のつながりを示している。

ジョー・ディスペンザ(2021)『あなたはプラシーボ』東川恭子 訳、ナチュラルスピリット

何かを考えるたびに、私たちの脳内では神経伝達物質に加え、神経ペプチドと呼ばれる化学物質が作られる。神経ペプチドは脳から身体中にメッセージを送り、各ホルモンセンターを活性化させる小さなタンパク質だ。すると身体がそれに反応し、人間は感情を感じることになる。胸が締め付けられるような感覚や、喉に何かつっかえたような感覚などに覚えがあればそれだ。身体が感情を受け取ったことを察知した脳は、その感情に見合った思考を探してくる。例えば、怒りの感情を抱いていたとしよう。その怒りの感情ゆえに、さらに怒りの対象となる事柄を見つけようとする。イライラしているときに、普段なら気にならないことような些細なことにもイラッとして頭から離れなくなり、ますますイライラが募ったという経験は誰でもあるのではないだろうか。そういった思考を抱いた脳は、再びさきと似たような化学物質を生成し体内に送信する。そして、その感情は思考に同調し、強化されることになる。

このように、思考が感情を生み、感情がそれに見合った思考を連れてくる。これはループ状になっていて、ほとんどの人はこれを何年も続けている。脳は、身体が感じている感情に対応し、それを支持する思考を巡らせて同じ感情を増幅させていく。それに伴い、反復する思考は脳内の神経回路の固定パターンとしてフレーム化されることになる。

身体では何が起きるのだろうか。自動操縦思考に合わせて繰り返し沸き起こる感情(脳内で固定パターン化した思考にマッチした感情)を身体が記憶するよう条件づけが行われる。これはすなわち、感情を引き起こすホルモン物質への依存状態となることを意味する。この一連の流れに顕在意識のコントロールは働かない。身体は無意識にプログラムされ、条件づけられ、文字通り意識に成り代わる。

思考が感情を呼び、感情が思考を呼ぶというこのループが一定期間続くと、最終的に脳が身体に送る感情信号を、身体がすっかり記憶するようになる。すると、この思考と感情のサイクルが不動のパターンとして確立し、馴染み深い心の状態となる。この状態とは、何度もリサイクルされ続けてきた過去の情報に基づくものだ。過去の経験の化学的痕跡以上の何ものでもないこれらの感情は、今の私たちの思考に大きな影響を与え、何度でも執拗に介入してくる。これが続く限り、ある意味、私たちは過去を生きているといえる。これが私たちが変わろうと決心しても容易に変われない理由の一つである。

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